木の看板の長所は、木の形・色・年輪から感じられる美しさ、大きさ・厚みから受ける量感、彫刻文字(またはマーク等)と色彩と木の調和がかもし出すリズム感が、総合的に心地よさを誘うことである。
逆に短所は、制作時間が長く、制作コストが高いこと。素材である木の選定にも長い時間と多くの情報が必要である。また、木の種類によっては、ひび割れ反りがでる。ただ、経年による変色などについては、現在ではかなり防止できるようになった。
日本における木の看板の歴史は、まず社寺に始まる。一般の営業用としては、奈良・平安時代の市の立った時に使われ始めたといわれ、本格的には、江戸初期から中期以降に、商人達が競って豪華な看板を店頭に掲げた。従って制作する職人も増え、分業による高度な技術で次々とすばらしいものをつくり出した。
その後、明治・大正を過ぎると、他の素材による看板が増え、特に戦後、プラスチックをはじめとする人工素材の発達のため、一時衰退の一途をたどった。しかし、近年、自然素材のよさが見直されるに連れ、少しずつではあるが需要も増えている。
中国ではさすが「書」の国だけあって、その歴史は詳らかではないが、書き文字を強調・誇示した物が数多く、今でもそうした作例が街中で散見される。欧米では、目印としてシンボルマークなどの形にそって切り、木の素朴さをいかすのではなく、多色を施したものが多く日本の伝統看板のような銘木を使ったものはあまり例を見ない。漢字の国との違いなのであろうか。