世間に知らしめる得意のものを「表看板」という習わしがあるし、嫁入道中などの荷持ちが着る紋付の袢天(はんてん)をカンバンというし、人力車の提灯(ちょうちん)もカンバン、木曽山中では材木の木印のこともカンバンという。このように広く目印・標識の意味に使われるほど看板は目印としての効用が大きかった。
看板の出現については、平安時代前期に律令の条文について解説した『令義解(りょうのぎげ)』の「開市の条」に、市の店ごとに看板のような標識を立てるといい、『延喜式』には店ごとに看板を立てて販売品目を標記せよとしているが、実際どんなものであったかは今日知ることが出来ない。古い看板の形態をうかがえるのは伝土佐光信画の『星光寺縁起』が最古のものらしい。ここには筆売の尼の家に筆の看板が描かれている。『洛中洛外図屏風』になると、もうその数は増え、種類も多数になってきている。